なるほど、なるほど…そうまとめてきたか…な最終回でした。
最終回を見終えた率直な印象を書くとするならば、
「お、おぉ…」が2割(初見時は3割)、満足感が8割といった所でしょうか。
まず、一応前提として書いておくと、全ての事件に関わっていた犯人が
加瀬(井浦新)だったのにはとても腑に落ちました。
共犯者もおらず、どれか1つの事件が違う犯人って訳でもなく、
全て1人で罪を背負っていた事にするとは
なんて設定なんだ!?と最初は呆然としてしまいましたが(もちろん驚きの意味で)、
パンドラの箱の中で眠っていた事件の一部始終を見ていくと、
不思議と、犯人は加瀬しか”あり得なかった”と思わされるのです。
それは、梨央(吉高由里子)や優(高橋文哉)を守るためだったらどんな手段を使ってでも動く…
言わば、”ライク”にも”ラブ”にも括れない、大切な妹や弟に向けた”家族愛”のような愛情が、
「ここまで献身的だと犯人じゃないのでは?」と一瞬錯覚するくらいには
ずっと描かれてきたから。
普通だったら、15年前の事件で死体を遺棄してしまった時点で
何事もなかったかのようにそばに付き添っていられる冷静さはなくなり、
怯んで逃げてしまいたくなるとも考えられるんですが。
そこは、まだ青かった弁護士時代に達雄(光石研)と出会い、
「私は家族の話をしている」の”家族”とはどんなものなのか?
法を犯してまで、自分の身を犠牲にしてまで庇おうとする動機はどこから来るのか?を知るために
彼=父親の目線に立って支え続ける道を選んだと思えば納得出来ます。
では、ここまで納得しておいて、
なぜ冒頭で「『お、おぉ…』が2割」という表記をしたかと言うと、
8話からの構成と加瀬の描写にあるんだと考えています。
最終回の前半、匂わせていた藤井(岡山天音)や大輝(松下洸平)が
事件に関わっていない事が早々に明かされ、
「じゃあやっぱり”あの人”なのか…?」と、真相を知りたいけど知りたくないような葛藤の中
残り30分をドキドキしながら見守る展開には確かに引き込まれましたが、
それと同時に、ちょっとした唐突感も覚えたのも事実で。
理由はいろいろあり、8,9話で2つの事件とはあまり関係のない
不正問題や寄付金詐欺のエピソードを膨らませたために、
加瀬から梨央への”最愛”の描写が薄れてしまった事。
9話終盤か最終回前半までで、事件に関わっていた事を匂わせる言動が盛り込まれなかった事。
そして、加瀬の生い立ちがほとんど明かされなかった事が大きいのかもしれません。
特に3つ目に関しては、回想をチラ見せするだけだったので、
親を幼い頃に亡くした時の心情や、親からの愛情を十分に受けられなかったが故の苦さ…
といった背景をもう少し掘り下げてみたら、
達雄と同じく事件を隠蔽し続ける形で支えようとした姿にも説得力が増したんだと思います。
「お、おぉ…」と感じた理由は以上で、今度は満足感について。
ハッピーエンドのようでハッピーエンドじゃない…という
“グレーゾーン”で完結させたのは、実に本作らしくて良かったです。
思えば、優の病気の設定や、15年経ってから梨央と大輝が
重要参考人と刑事として再会した関係性が効いていて。
学生時代の話が弾んで楽しそうにしていても、ようやく一緒にいられる事になっても
「この幸せは2つの事件によって再び壊されてしまうのではないか」という漠然とした不安が
常に隣り合わせにあり、それが物語の緊迫感や見応えを生み出していたと思うんです。
もう悲劇は起こって欲しくない…いつまでもこの状態が続けば良いのに…
事件の真相がはっきり明かされない中で描かれ続けた”ささやかな幸せ”。
最終回でも、墓参りの後に2人で手を繋いだ時に感じる温もりに
その”らしさ”が反映されていました。
視聴者の希望を叶えて、梨央に寄り添った全ての登場人物が幸せになるラスト、
逆に犯人が加瀬だと判明した時に、最愛の1人である梨央の幸せを願って自殺する
バッドエンドにも出来たかもしれませんが、
この良い意味で曖昧なラストが、本作の集大成としてはぴったりだったでしょう。
2人の前から離れるのも、ついでに言えば、優が「過去の記憶は戻らない」と言い切ったのも
また”最愛”とも言えますしね…。
視聴者に1人1人の言動の真意を汲み取らせて終わらせたのも印象的でした。
正直言って、最終回を見るまではあまり期待していませんでしたが、
あまり期待していなかった分、よくここまで上手くまとめられたなぁ…と驚かされました。
井浦新さんはこの手の重い過去を背負う役が似合い過ぎますね。
「Lemon」だけでなく「君に夢中」もすっかり井浦さんの曲に…(泣)
松下洸平さんは体全体を使って「視聴者に想像させる」ような
自然体な演技をされていたと思いますし、
何より、本作を見るまでは、
いわゆる「タラレバ」的なラフな女性のイメージが強かった吉高由里子さんが、
あそこまで”涙”を通して感情を魅せてくるとは…という新たな発見もありました。
本作に満足出来たのは脚本や演出の力もありますが、
この3人でなければ見え方が全然違っていたかもしれません。
「サスペンスラブストーリー」とはうたってはいるものの、
その中に含まれている”ラブ”には、共感してしまいたくなるものから
どうしたって同情出来ないものまで幅広い。それを覗き見るのも面白かったです。
物語の中に多様性を取り入れる傾向のある昨今のドラマラインナップを考えれば、
“現代だからこそ出来た”作品だとも思います。
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