「プレゼントを使いまわされた気持ち」
はぁ……この言葉を聞いた時のショックの大きさたるや………。
前回の感想でも書きましたけど、やっぱり、王道のラブストーリーに見せているようで
王道ではないなぁとつくづく思わされます。
ラブストーリーは大抵は「2人の物語」なんですよね。
基本的に、主人公か相手目線の2通りで話を広げていくから、
その間に入ってくるライバルや元恋人は、俗に言う”当て馬”で不憫に描かれるか、
あるいは2人の”恋の障がい”として、視聴者が見ていて不快感を覚えるようにに
描かれたりする時もある。
でも、本作の奈々(夏帆)の場合は、完全に後者の立ち位置にいるのに
ちっとも嫌味に思わない。
…むしろ、今回は奈々の方に同情して、想(目黒蓮)はなんて罪な男なんだと
思ったくらいです(笑)
想の手話の主成分は奈々で出来ている事が判明してしまいましたからね。
恋は人を良い方向にも悪い方向にも変える…というのが痛いほど示されていて、
想との出会いを共通項に、紬(川口春奈)は当時のような真っ直ぐさが戻っていく一方で、
奈々はどんどん自分を苦しめていく対比は
見ていてとても辛い気持ちにさせられました…。
で、今回、その辛さに拍車をかけていたのは「カテゴライズ」だった気がするんです。
序盤では、想に「それは、聴者もろう者も同じ」「あなたも同じ」と励ます
奈々の姿が描かれましたが、
これが後々の内容において意味をもたらすシーンになっていました。
まぁ…2話の感想でも書いた通り、本作がよく取り入れる”前フリ”ってやつです。
上手い言葉が見つかりませんが、今回の構成は「落として上げて落とす」みたいなもので。
想を深く知らない同級生が、想が「耳の聴こえない人」だからと
わざと大声で話しかけてきたり、
警察が「耳につけているのはイヤホン」だという固定観念で接してきたり、
カウンセラーの人が彼を”悩みを抱える1人の人間”として平等に接しずに
「この人にはこんな風に接してあげれば大丈夫だろう」と決めつけてアドバイスしてきたりと…
最初は完全に”聴者側”にいる人々と想の関わりが描かれてからの
奈々との出会いだったので、想と同様、彼女の言葉によって
ちょっとした救いや希望を感じた視聴者も多くいた事でしょう。
しかし…そんな「こうであって欲しい」という”理想”は、
その次の奈々の思いやったつもりの行為で、一気に打ち砕かれてしまいます。
「想自身」ではなく「耳の聴こえない想」ばかり気にしている律子(篠原涼子)や、
あの子に”聴こえない”想くんの気持ちは分からないと断定づける現在の奈々の言動も含めて。
聴者やろう者、家族関係なく、
全ての人々が無意識に相手をどこかのジャンルにカテゴライズしては、
その狭い範囲でしか相手を見ていない…という現実と同時に、
“カテゴライズされる側”の苦悩や孤独も並行して描いていたのが、
今回の余韻に繋がったのではないかと思います。
奈々の夢も切ないものでしたね…。
あの青いハンドバッグはきっと、
彼女が本当に手に入れたかった”聴覚”でもあったんでしょうね。
手話をするからいつもリュック姿だけど、ハンドバッグを持てば片手で手を繋げる…
そんな憧れを抱いていた。
奈々の友達・江上役を演じる那須映里さんの呟きによると、
ろう者でも実際にハンドバッグを使ったり、手を繋いだりする事はあり、
「片手手話」もあるそうなのですが。
これまでも有線のイヤホンや、何気なく流れていたお笑い番組、前回の100均のヘアピンなど、
登場人物のその時の心境や関係性を象徴するかのような”アイコン”が添えられていたように、
今回もハンドバッグを取り入れたある種の「分かりやすさ」が、
感情移入させるには最も効果的なエピソードになっていました。
強いて言うなら、紬が想の事を「好きな言葉をくれる人」と
正輝(風間俊介)に言っていた辺り、
彼女はもう彼を恋人として受け入れているのだろうと考えると…
別れを告げた側ならともかく、吹っ切れるにはあまりにも早いので、
もう少し湊斗(鈴鹿央士)を引きずるような描写があっても良かったとは思いますが。
でも、本作の”当て馬”になりそうなポジションや、嫌な人物になりそうなポジションを
あえてそう描かずに、それぞれの心情を1人ずつ汲み取っていく作風はとても好みです。
奈々の今後はもちろん、正輝と奈々の関係はやっぱり元恋人同士なの?という所も気になります。
どんな展開へと向かっていくのか…次回にも期待します。
↓前回の感想はこちら↓
Source: りんころのひとりごと。
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