昨日の某作品では、全ての事の発端となった息子も、息子を擁護し続ける父も
憎い気持ちが一貫して変わらないまま見終えたように、
本作も、灰谷(加藤シゲアキ)がいなければ
もっと生徒と講師の関係性を深堀り出来たかもしれない…
そんな勿体なさは終始残りました。
そう感じたきっかけは、王羅(横山歩)が志望校に向かう時に
我が子のような感覚で全力でエールを送った橘(池田鉄洋)のシーンにあります。
捉え方は人それぞれでしょうが、個人的には、本来もらい泣きするはずが
ここでもらい泣き出来ずに終わってしまいました。
理由は、王羅回である7話が、彼がこのまま受験勉強を続けるか続けないかの葛藤の描写が
メインになると期待していただけに、なぜか目的が逆の「スターフィッシュ」のエピソードが
間に練り込まれたお陰であっさり解決された…という当時の残念だった記憶が蘇ったから。
桜花ゼミナールには黒木(柳楽優弥)だけでなく、自分なりの考えを持って、
自分なりのやり方で子供たちと向き合う十人十色の講師がいるのだから。
今回の 志望校に出向いて見送るシーンを見る限り、
例えば、灰谷が 黒木がルトワックを辞めた真相を追究するために
邪魔してくるくだりを一切なくす代わりに、
まるまる1話分を橘先生回や桂(瀧内公美)先生回として使って
「どの先生も子供たちの未来を見据えた上で受験をサポートしているのだ」といった
桜花全体の奥行きを描く形で、物語を盛り上げられた事だって出来たと思うのです。
「子供たちの事を想うたくさんの人たちと出会い」の最後の回想に灰谷が映るのも、
子供たちよりも黒木の事を想ってたよね??っていう違和感が残るし。
黒木が講師をしていく上で感じてきた苦しみは、
新人が故に塾や彼の事情にズカズカと踏み込んでいけて、
教師時代に”生徒の未来を奪ってしまった”点で同じ気持ちを分かち合える佐倉がいれば十分だし。
過去の因縁…みたいな縦軸は、果たして描く”べき”ものだったのかどうかは疑問です。
また、これはベタな学園ドラマ寄りにはなってしまいますが、思いつきで書くとすると、
黒木が灰谷に言っていた「子供たちから学んだ事」も、
塾の卒業式で教壇に立って、メッセージとして届けた展開にした方が
より集大成らしくなったんじゃないかなぁ…なんて。
子供たちの顔や表情を一瞬一瞬思い出すほど愛を注いできて、
そんな自分が子供たちのためにやってきた事が本当に正しかったのかと
独り怯える黒木の人となりが心に響いたので、使い方次第ではもっと活かせたのかもしれません。
…って、灰谷の存在意義1点でここまで長々と書いてしまいましたが(汗)
それだけ惜しかったって事です。
しかし、受験は受験でも中学受験を取り扱う本作は、
「”自慢の我が子”にするために親が子供に中学受験をさせる」という
漠然とした偏見を持っていた私の視野を広げてくれた
貴重な作品だったのには変わりありません。
子供が受験を決意するまで、志望校を決めるまでの1つ1つの過程には、
親父に打ち勝ちたいとか、自分自身を奮い立たせてくれた友達と一緒の中学に行きたいとか、
自分の可能性を広げたいとか、
それぞれが家庭環境や人間関係を通して得た”強い意志”が含まれている事。
そして、それを1話完結型ベースで1人の子供を取り上げていく形で
様々な”ドラマ”を見せてくれた、思わず応援してしまいたくなるような熱さのある作品でした。
あとは、キャラクター自体の話になりますが…
合格発表ページを開くのを少し早とちりしたり、部屋で1人ヨッシャー!!って叫んだり、
八重歯が見えたりした所も、
黒木が好きで、最終回まで見てきた視聴者の特権っぽさが感じられて良かったです(笑)
切れ長の目でクールな顔つきをした柳楽さんが、
思いっきり笑顔を浮かべると八重歯が見えるというギャップ…
そういう意味でも、ザ・フィクションな黒木にぴったりでしたね。
物語の展開で言えば、最初は冷たくて怖い主人公が回を重ねるごとに優しさを見せる…
なんていう、受け取り側に変化を感じさせる描写は王道ですが、
“弱さ”を描く事で変に湿っぽくもせず、
あくまでも異様なオーラをまとい、斬新な提案をする
彼の個性にブレがなかったのも好感が持てました。
タメになる部分もあるし、原作はどうなっているのか興味はあるし、
最近CMでよく流れる次作主演の「浅草キッド」もちょっと見てみたくなっているし…
いろいろと興味を惹かせてくれる、良い出会いだったと思います。
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Source: りんころのひとりごと。
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