地上波連続ドラマだと、「俺の家の話」以来約3年ぶりとなるクドカン脚本。
小さな頃からテレビっ子で、テレビドラマ好きの立場からしたら、
大手脚本家の新作が発表されてももう有料サービスに流れていってしまうのかな…と
寂しい想いをしていたので、またこうして地上波で見られる事はとても嬉しいです。
やっぱり、まだまだ大手の方の脚本力が必要だと、ここ最近のドラマを見ていて思うので。
でも…個人的な好みで言うと意見が変わってきて、
宮藤さんの描かれる世界観が極めて独特であるが故に
初回で心を掴まれるケースは少なく、自分が面白いと感じられるまでに時間のかかる
脚本家だという認識でいるんですね。
「流星の絆」「監獄のお姫さま」なんかも最初は「えっ…?(困惑)」から始まって、
3〜5話辺りから作品の良さが何となく分かってきたくらいですから(笑)
じゃあ本作の場合はどうだったかと言うと、少しだけその例に当てはまる感じで、
パーツパーツは笑えたけれども、初期設定も兼ねて
“昭和あるある”エピソードや小ネタをふんだんに盛り込んだあまり、
話の進みが遅かったのかな?という若干惜しい印象を覚えながら見終わる事となりました。
「この作品には 不適切な台詞や喫煙シーンが含まれていますが(中略)
1986年当時の表現をあえて使用して放送します」
随分ご丁寧なおことわりテロップを2度も表示してからすぐ、
そんな訳で、好き勝手やっちゃって良いよね?と言わんばかりに、
ブス発言とか未成年の喫煙とかっていう、今なら敬遠しがちな要素を被せてくる所は、
昭和の世界観を本気で再現しようとする作り手のこだわりが感じられて潔いですし。
そもそも、昭和時代を生きていない私からしたら、
今と昔とでこんなに違うの!?という驚きの連続で、見ていて飽きません。
話のテンポ感も絶妙で、展開も軽快にサクサク進んでいく。
コメディパートに関しては申し分なかったんです。
ただ、タイムスリップの仕組みを時々紹介しつつも、基本的には昭和を懐かしむ描写だったり、
昭和と令和のジェネレーションギャップに動揺する市郎(阿部サダヲ)の姿が
中心に描かれていくばかりで。
本作が結局、視聴者に何を伝えたいのか?どんな物語にしていくつもりなのか?が
放送開始から47分過ぎの居酒屋のシーンまで中々見えづらかったのが、
「面白いんだけど…」と感じる原因に繋がったんだと思います。
本題に入るまでの前置きが長かったと書いた方が、もっと分かりやすいのかなぁ。
まぁでも、今回のラストでトイレが工事されて
市郎が(何か策が見つからない限りは)昭和の世界には戻れなくなったので、
“昭和あるある”は2話以降は徐々に減ってくるのかもしれませんね。
そして…もう1つ気になる事、いや、私が今後本作にハマれるかがかかっているのが、
令和から昭和にタイムスリップしてきた向坂親子サイドのストーリーの扱い方でしょうか。
初回だけだと今の所は、主人公が市郎とキヨシ(坂元愛登)の2人いるように見えます。
しかも、キヨシの母・サカエ(吉田羊)に関しては
何か意図して昭和にやってきたみたいなので…
その”謎”で話を膨らませて時間軸を行ったり来たりし過ぎると、
内容が分かりにくくなる可能性が出てくるんじゃないかという気もします。
本作はあくまでも「昭和のダメおやじの「不適切」発言が
令和の停滞した空気をかき回す」物語で、クスッと笑える作りが特徴的だと思うので。
過度な場面転換はせず、シンプルに魅せていってくれる事を期待したいです。
世間では「昭和礼讃ドラマになってしまうのでは?」という反応もたまにお見かけしましたが、
クドカン脚本なので、単純に「やっぱりあの頃は良かったな」「令和はここがダメ」
みたいな昭和持ち上げ話では終わらないんじゃないかと踏んでいます。
市郎とは対照的に、昭和を生きる人たちに嫌悪感をむき出しにするサカエがいるし、
「拳と拳で語り合えば良い♪」の直後に挿入された
ムッチ先輩(磯村勇斗)とキヨシの喧嘩シーンで
キヨシの傷だらけで痛々しい顔を見たら、
話し合う方が断然良いと思わずにはいられません(笑)
生きづらさを感じて過ごしてきた人は
声を上げられなかっただけで昭和時代にもきっといただろうし、
勇気を出して声を上げてくれた人のお陰で、今の過ごしやすい環境が出来つつある訳で。
しばらくは市郎が意見をぶつける展開になるんでしょうけど、
どちらにも長所も短所もあって、最終的には双方の良さを理解し合って
ちょうど良い形に落ち着く…そんな話になって欲しいですね。
あと…賛否両論のミュージカル演出は、初見こそびっくりしましたが私はアリだと思います。
「炙りシメサバ♪」の合いの手もそうですが、
「それが組織♪」がポーズも含めて癖になるなる(笑)
ミュージカル中の歌詞をそのまま会話用の台詞に起こしたら説教臭くなっていたでしょうし、
逆にそれで遊び心をつける事で、前半のコミカルな雰囲気や軽やかなテンポとの
釣り合いがとれていて。
加えて、今の時代がスマホいじりやワークライフバランスなどで
“1人の時間”を重視する人が増えている社会である事も考慮すると、
その風潮をさり気なく皮肉っているようにも見えて、中々巧妙な手法だと感じるくらいでした。
次回はもっとパワーアップするし、毎回ミュージカル演出はあるみたいなので、
そこも楽しみにしておきたいです(笑)
Source: りんころのひとりごと。
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