「現実的だと思ってる」
まさかまさかの…です。恵那(長澤まさみ)からこの言葉を聞きたくなかったですね。
テレビを見ながら思わず「うわぁ…」って言っちゃいましたよ。
私たちには番組を守る責任があるので…って感じで一歩引いて、
自分と相手とで境界線を分けるような淡々とした喋り方が
滝川(三浦貴大)から移ってしまっているのが伝わってくる辺り、
彼女はとうとう、忖度が蔓延る世界に飲み込まれてしまったのだというのが
このシーンから分かります。
前回の彼女の描写的に、そうなるのも時間の問題じゃないかとは察していましたが…
それでもかなりの衝撃を受けました。
かつての恵那の暴走にしろ、今回の、揺るがぬ証拠を手に入れた
拓朗(眞栄田郷敦)の孤軍奮闘っぷりにしろ、
恵那と拓朗の二者間での立場の変化を描いての”転調”で
毎回視聴者を引きつけていっている作風から考えれば、
そのままの勢いで”痛快劇”で魅せる事だって出来るはずなんですよね。
分かりやすく痛快劇に仕立て上げてしまえば、盛り上がるのも目に見えているし、
そこがゴールになるのでプロットも作りやすいかもしれない。
でも…本作は「あえて」寸止め状態で終わらせ、
同時に、得体の知れない巨大な何かに脅かされながら過ごす現実も描いている。
真相が世に伝わるまであと一歩って所を邪魔してくるのは、
いつも正一(鈴木亮平)のような、
何を考えていて、どこでどう動いているのかが読めない存在なのだと
さり気なく示す姿勢にブレがないのが、妙な余韻を残すのです。
ただ、本作…もう1つ、さじ加減が上手いなぁって思っているのは、
“リアルな現実”を描こうとして、脚色し過ぎていない所。
例えば今回は、拓朗が調べてきた事が
大人たちの汚い手によって簡単に奪われてしまう残酷な部分も描かれた訳ですが、
それだけでなく、最後の最後で「もしかしたら…」と思える
ちょっとした希望も描かれました。
「努力は必ず誰かが見てくれている」じゃないですが。
日々を生きている以上、人の周りに寄ってくるのは味方ばかりではないけど、
必ずしも、敵ばかりでもないと思うんですよね。
誰か1人だけは拓朗を認めてくれている…という事実にホッとします。
その人物が今度演じる役が武田”信”玄なのも、何だか粋なチョイスでしたね。
そして、ここまで見てきて、ずっと考えていたサブタイトル「希望、あるいは災い」の
真の意味は、今回のような内容を指すんじゃないかとも思わされました。
冤罪事件を追えば追うほど、様々な人間関係が構築されていっているのを
拓朗はまだ自覚していない気がします。
劇中の拓朗のモノローグで「いつの間にか僕は、びっくりするほど敵を増やしていた」と
ありましたが、びっくりするほど”味方”も増やしているんじゃないかと信じたいです。
↓前回の感想はこちら↓
Source: りんころのひとりごと。
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