これまで関わってきた債務者の回想を挿入しながらの…
「私、執行官になって、もっと人間を知りたいんです。」
元々犬が好きで、犬と関わる仕事がしたくて上京してきたひかり(伊藤沙莉)から
この言葉が出てくるのも面白かったですが、
同時に、この展開のための全体構成だったんだろうな…と思いました。
物語の前半は、視聴者にはあまり馴染みのない執行官の仕事を説明・紹介するために
どうしても小原(織田裕二)の描写を増やす必要があり、
一方で、主人公であるひかりの存在感が薄めになってしまっていました。
ですが、彼を前面に出し、世間からの評価に耐え、
いかに苦悩や葛藤を抱えながら仕事に取り組んできたかをコツコツと描き続けた事で、
「執行官とは何ぞや?」というのもしっかり形づくってきたのも確かで。
今回はそんな今までの描写の積み重ねが活かされていて、
小原をあえて一歩後ろに引かせた状態で仕事を描くだけでなく、
執行補助者として関わってきた彼女の気持ちも序盤に描いた事で、
集大成らしく、主人公の成長が直に伝わる内容に仕上がっていた気がします。
ひかりは以前、人に同情しやすい、少し不思議ちゃんの性格に描かれていたので、
最初はあんな状態だった彼女がここまで頼もしい存在になるなんて…
という意外性を持たせようとして、今回の見せ方になったのかもしれませんし。
執行官のお仕事がどういうものかを視聴者に理解してもらうには、
この構成が最も実現しやすかったのかもしれません。
前半の方は時々、解決方法に腑に落ちない回もあったものの、
“連続ドラマ”である事を踏まえれば、ユーモアもありつつ、かなり緻密に計算された作品でした。
…最終回で唯一惜しかったのと言えば、「こども六法」が出てこなかった事くらいかな?
私自身も、ひかりの言う「泥棒」ではないですが、
本作を見る前と全話見た後とでは、執行官に親しみやすさを覚えるほどには
イメージがガラッと変わりましたし、
執行の仕事も「こんな仕事もあるのか〜」と新鮮に感じる事も多く、
最後まで楽しませていただきました。
そして思うのは、脚本家・大森美香さんの紡ぐ作品が改めて好きだな…と。
等身大な部分、優れている部分、逆に、完璧になりきれない部分といった
人の様々な一面を引き出すキャラクター造形に長けているからこそ、
ひかりも、小原も、おじさんずも、愛しい人物に映ったんだと思います。
特に、執行関係者みんなで一列になって歩くシーンなんかは、
繊細さや苦しみを悟られないように、自信を持って強く立ち向かおうとする
人間味が感じられて毎回好きでした。
そして、織田裕二さんが可愛らしいと思えたのは初めてでした(笑)
コミカルなお姿がしばらく見られないとなると、寂しいですねぇ…。
事務員になったひかりが夢見るのは、
おじさんずとお揃いのベージュのコートをまとった執行官の自分の姿…
そう遠くない未来の話をした所で、物語は幕を閉じる。
いや、何度でも書きますが、ドラマインターバル期で放送されるSPドラマでも良いので
ぜひぜひ”続き”を見たいです!
↓前回の感想はこちら↓
Source: りんころのひとりごと。
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