冒頭のスタッフクレジットで、脚本家がいつもの根本ノンジさんではなく
本作初担当のお2人だと知り、今までの雰囲気と風変わりしてしまうんじゃないか…と
ちょっと不安に感じながら見始めましたが。
演出家は同じ方なのでそこで”本作らしさ”を保たせつつ、
2時間スペシャルという事で少しアレンジを加えた脚本になっていて、
個人的には2クールの頃よりも完成度の高い内容に仕上がっていたんじゃないかと思います。
見ていて気づいたのは…これ、大まかに言えば前後編構成になっているんですよね。
前半は、歳の離れた2人の子供を育てる大変さを経験する母親でもあるし、
遺体にも遺族にも真摯に寄り添う法医学者でもある
つぐみ(加藤柚凪)にもいよいよ伝えなければならない時がやってきた…という、
“家族で”次のステージへ向かおうとしている万木家の変化や葛藤する姿が描かれる。
前半はホームお仕事ドラマ、後半はホームドラマをガッツリと…で、
こういった2時間スペシャルで多少ジャンルの異なったエピソードを見せるのは
近年ではかなり斬新ですし、
「向き合うべき課題」も、主人公単体と複数とで対比がとれている印象でした。
で…さらによく出来ていたのは、
劇中で茶子先生(山口智子)が代弁していた「そうあって欲しい」という
“願望や希望”を表す言葉が、両方にかかるような内容になっていた事。
前後で描き分けるとなると、話の流れがバラバラになりそうなものですが、
一本の太い軸を設定したお陰で、内容の一体感にも繋がったような気がします。
つぐみ(と里美)の成長という視聴者の注目ポイントもあるし、
子供の目線に立って言葉を選んで話し合うとか、朝ごはんを作る時の動線とか、
画面上では描かれていない”日常”も浮かびやすく、
主人公が身近に感じられる生活描写の質の高さを考えると。
やっぱり本作は「北の国から」みたいに、定期的なスペシャルでの放送が
一番合っているんじゃないかって思うんですよねぇ。
実際、久しぶりに万木家の面々を見たら、実家に久々に会いに来た孫(?)を見ているような
ほっこりとした気持ちにさせられましたし。
趣旨が変わってきそうですが…中学生のつぐみも見たいですし(笑)
じいじには微かにでも、症状が良くなる時が再び訪れる事を願って、
また来年か再来年くらいに続編でお会いしたいものです。
最後に…平の症状が避けられない段階にまで来ている事を物語らせる
時任三郎さんの若干小刻みに揺れた演技も、
時の変化の速さを感じさせる切り替え演出も、中々グサッと刺さりましたね…。
平が朝の支度をしている姿を最初に見て、あまりにも自然だったものだから
一瞬「あれ?」と思ったのも束の間、
次のシーンでは白髪で目の焦点が合っていない様子が映った時の衝撃は大きかったです。
これから認知症というワードが物語の鍵に後々なってくるのだ…と、
あそこで引き締められた気分でした。
Source: りんころのひとりごと。
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