17歳の総理大臣と22歳の国務大臣で構成された内閣が
日本のとある地方都市を「プロジェクト・ウーア」の実験台にし、
1つの国を作り上げるまでを描く、SF×政治がテーマとなった物語らしい。
枠が廃止になったからとは言え、以前月曜22:45〜23:15に放送されていた
テレビをあまり見ない層と言われている若年層をターゲットにした「よるドラ」枠ではなく、
NHKドラマの中でも最も社会性、メッセージ性の高いこの「土曜ドラマ」枠で
なぜ放送する事にしたのか?と思いながら見ていましたが…
なるほど…これは確かに、ただの”作り話”としては流せられない、
視聴後に反芻したくなる作品だなぁと。
系統的には、同じく過去にSFを扱い、実験的な世界観作りに挑戦した
「きれいのくに」の発展形とも言えるんですよね。
コンセプト自体は違うものの、制作する際に設定した
「もしも日本がこうなったら」という”if”の世界を、
丁寧に、立体感を持たせるように構築していく点では共通しているというのか。
本作の場合は、近未来の仮想都市を描くSF作品だからと言って
スタジオセットばかりに頼らず、ロケ地と言われている長崎県佐世保市の街並みや、
そこで暮らす住民の様子を映す形で”日常”とバランスを取る事で、
SF由来のCGや合成だらけの安っぽいイメージを回避し、
アニメならではのファンタジーさと、現実世界ならではのリアリティが
上手く融合された仕上がりになっていたと思います。
内容はざっくり言えば世界観の説明で終わったので、
話はまだまだこれから…といった所。
でも、舞台が「20XX年」ではなく「202X年」に設定されている事、
そして、本編でも言及されていた通り「独裁国家」を作る恐れのありそうな
公の前では表情も声色も一切変えない真木(神尾楓珠)の無機質な人柄と、
「AIが主導権を握る」前提で進む政治改革に焦点が当たっていたのが効いていて、
面白いよりかは、回を重ねるごとにヒリヒリとした感覚を募らせながら
怖いもの見たさで見るスリルを味わえそうです。
何と言うか…ごく普通の生活を送れていた街がある日突然ウーアの実験対象都市になって、
日常の何もかもが大きく変わる事に危惧や不安を覚えている
既存(元々その街に住んでいた)住民の視点で見たら、より一層没入感も感じられるのかも?
効率を重視し、今ある制度を削減すればするほど
人間らしさを欠いてしまうし、最悪の場合、戦争も起こりかねない。
今の真木のやり方では、切ったら切りっぱなしで
その対象者の未来までは保証しないように見えるから、
いつ自分が切られるのかという恐怖に怯えながら過ごす生活を
住民に強いる政治は暴君にも近い。
ただバッサリ切っていく痛快劇では終わらせず、
物語の終盤になればそのうち、内閣の発言や政策が炎上を招き
ストライキを起こす展開や、AIが暴走する展開も十分あり得ますが、
逆に「若者は大人しく黙っとれば良いんだ!」という
“若者の改革=悪”を印象付ける話で完結したら、
それはそれで本作を生み出した意味はなくなるのかなぁ…と。
今年の4月から成人年齢が20歳から18歳に引き下がり、
“大人になる”意識を強く持つようになった17歳も多い事でしょう。
このタイムリーなタイミングで放送される挑戦的な本作を応援したいですし、
最後まで見守っていきたいです。
Source: りんころのひとりごと。
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