ワクチンの陰謀論、緊急宣言事態解除後のお祭り騒ぎ、ホテルでの療養生活に医療逼迫…
未来の話だけれど到底そうは思えないエピソードが続く中で、
感染者と同じくらい医者の助けを必要としている人がいるにもかかわらず
先送りにされてしまう話も描く。
これも、宮藤官九郎さんがコロナ禍で常々感じていた事だったのかもしれませんね。
“過去のもの”になり、時を経て忘れ去られてしまう事に対する怖さと、
もしまたパンデミックが起きた時には、どうか少しでも変わっていて欲しいという僅かな願い。
前回と最終回は、そんな複雑な感情が入り混じった内容に仕上がっていました。
後半のヨウコ(小池栄子)が陽性になってからの展開はやや駆け足な気がしてしまって、
「無免許で数々の患者を治療」という、いつか向き合わなければならない問題を
抱えていたからこそ、もっと尺が欲しかったかな?とは思ったんですけど、
ヨウコが逮捕される際に、いつもの「ここは新宿歌舞伎町〜」から始まる
享(仲野太賀)のナレーションを重ねながら、様々な国籍の外国人やトー横キッズが駆け寄ってくるシーンには
考えさせられるものがありました。
日本の医師免許を取らずに医療行為したのは法律上ダメな事で、雑な治療だけれども、
享の言う通り、なぜアメリカの医師免許では認められないのか?という謎は残るし、
彼女がいなかったら救えなかった命はたくさんあった。
だから、今までの行為が「正しい」のか「悪い」のか、はっきりと境界線は分けられない。
涙を誘おうと意図して下手に走馬灯のように回想を流すよりも、
彼女と彼らだけにしか見えない強固な関係性を感じて、グッときてしまいました。
最後の手錠で拘束された腕を上げる所も、ザ・ヒロインって感じで頼もしくてね…
全力でやり切った!だから、後はよろしくな!なんて、
まごころのみんなにバトンを託してくれているように思えて、清々しさが残るシーンでした。
南(橋本愛)がバラしていた件については、彼女の出番がずーっとなかったので
そうかなぁとは思っていましたが、動機はとても今時で、繊細なものでした。
「怖いのはウイルスよりも人間の心」本当にそうだと思います。
コロナ禍もSNSによる誹謗中傷が多かったと記憶しております。
パンデミックが起こって、制限が課せられて家に留まる日々が続けばストレスは当然溜まる。
でも、発散出来る場所が他にないから、
ほとんどの人は手軽に使えるSNSで考えを吐き出しがちになる訳で…
そうなるといろんな人の考えに触れる訳で、嫉妬したり、比較して落ち込んだりで
ネガティブな感情が膨らみやすいんですよねぇ。
そんな彼女も最終的には、聖まごころ病院内のカウンセラーとして、新たな居場所を見つける。
「まごころ」という名前がつくのにも説得力が増して、ちょうど良い所に落ち着きましたね。
今期の医療ドラマの中では、何だかんだで(!?)
本作が最も医療ドラマらしい仕上がりだったと思ってます。
日曜の方は続編だし、枠のカラー的にエンターテインメントに走る事は分かっていましたが、
月曜の方は王道路線かと思いきや、個人的な事情と理不尽てんこ盛りでしたからね(苦笑)
現代社会ならではの出来事を通して、強さ、弱さ、がむしゃらさ、ポンコツさ…
いろんな感情を見せながら、目の前の患者に等身大で向き合っていくヨウコたちの姿は
良い意味で生々しく、人間臭さが詰まっていてとても魅力的なキャラクターに映りました。
白木(高畑淳子)の名前いじりも毎回の楽しみにw
当初こそ、クドカン脚本と、ほぼ関わりのなかったフジテレビの演出家の組み合わせで
相性は大丈夫なんだろうか?という心配を勝手にしておりましたが、
最終的には、どちらかがどちらかの作風に合わせるんじゃなく、
お互いが良い塩梅を見つけて歩み寄っていく…そんな作品になったのではないかと思います。
感想を数話書いてそのままフェードアウトかな…と思うくらい、途中までは本作にノれなかったんですが、
5話からエンジンがかかったように感じて、そこから面白くなる可能性を信じて、最後まで書き続けて良かったです。
(そして、最終回の感想をやっと完成させられました。毎度毎度遅くて、申し訳ありません。)
やっぱりクドカン作品は、私にとってはじわじわハマっていくタイプなんだな…(笑)
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Source: りんころのひとりごと。
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