武志(草彅剛)の言う「ごめん。ごめん。」の言葉に、うっかり涙が…。
15年ぶりに再会した両親を前にしたからなのか、
少年っぽいあどけなさが凄い滲み出ていたんですもん。
やっぱり、両親がそばにいると、その温もりが心地良く感じられて
いつの間にか子供に戻ってしまうものなんですね…。
武志が帰国して、あの桜の木の下で家族で太巻きを食べて…
そんな昔からの風習を通して、子供の頃から抱えていた「やっぱり苦手やわ。あの空気」を
再び思い出す諭(仲野太賀)の気持ちの変化も印象的でした。
そして、もう1つ印象に残ったのは、武庫川駅を使ってのラストシーン。
“昔みたいな”事をまた経験したからこそ、あのラストに繋がったのかもしれませんね。
駅の構造だけでなく、ホームもフルに活かしていて、見応えのあるシーンになっていました。
どうしても武庫川駅周辺が舞台でなければならない理由があるのかなぁ…と思いながら
今まで見続けてきましたが、最後を見て、なるほど…と。
駅に入ると奥の方に、線路に沿った細くて長い歩道が続く入り口があるんですが、
そこが何だか、秘密基地に行くための抜け道みたいで
子供心がくすぐられてしまったんですよね。(だから追いかけるのも頷けるというか。)
で…歩道自体は、出発点(武庫川駅)が”現在”なら、
到達点(向こうの土手)は”未来”にも思えるし。
その中間に位置するホームに武志がいるとなると、
未来へと進む諭を陰ながら見守ってくれているようにも思えたのです。
「お兄ちゃん」には二度と追いつけないけれども、
「兄貴」なら、故郷に帰ってきた時に、ホームでまた会えるのかもしれない。
待っていてくれるのかもしれない。
ホームには確かに「兄貴がいた」…アメリカ出発前に彼が野本(片山友希)と交わした
自分の話と共に、思い出として刻まれて行くのでしょう。
そして、いつものナレーション「…というのは、また別の話で」で締める。
結(伊藤沙莉)や福子(永尾柚乃)や長男、両親や武志の存在に支えられながら
これからも松戸諭の人生は続く…そう思わせるには、中々洒落た締め方だった気がします。
自販機の下に落ちている飛行機のチケットを拾った所から物語が始まった本作。
当初はドラマチックに、松戸諭の「ツイている」人生を描くのかと思いきや…
最後まで見てみれば、人生は”奇跡”と”後悔”の繰り返しなのだという事を
じっくり描く作品になっていました。
でも何と言うか…主人公が役者の設定なので、壮絶には見えるけれども、
どこか良い意味でありふれてもいるような?
もちろん、チケットの持ち主が事務所の社長で、おまけにスカウトしてもらえた!
っていう経験は中々出来ないだろうけど、
長年過ごしてきた街で、夢を諦めてしまった者から恋が実らなかった者、
自分にとっての後の支え人になってくれる者まで、いろんな人との出会いと別れを経験したり。
なんであの時あんな事言ってしまったんだろう…っていう後悔を後々になって抱えたり。
武志も同じく、”あの時の”諭や両親に謝れなかった事がずっと心残りで。
立派な人に見えて、みんなたくさんの悲しみや悔しさを引きずって、
時に思いがけない出来事に救われながら、何とか今を生きているんだろうな…
という片鱗が度々見えたからこそ、
自分自身の人生と重なって、刺さる部分があったのではないかと思います。
地上波で見られて、本当に良かったです。
そして、脚本家・足立紳さんが来年下半期に執筆される朝ドラ「ブギウギ」にも
期待が膨らみますね。
朝ドラには魔物が潜んでいる(個人的印象)ので、どんな脚本家さんでも
ハズレの週なし!は難しくはあるんですけど…
それでも、素敵な作品を作って下さると願いたいです。
↓前回の感想はこちら↓
Source: りんころのひとりごと。
コメント