「惚れてたんだろ?花岡に」
よね(土居志央梨)のこの言葉…視聴していた時は
轟(戸塚純貴)が花岡(岩田剛典)に恋心を抱いている事を指す
言葉だとは思っていなかったんですよね。
いや…「惚れた」にはびっくりしたけれども、
それだけで恋愛だと決めつけるのも安直なのかなぁというか。
その後で轟が「あいつがいなかったら、俺は弁護士を目指していなかった」
「明律大で共に学べると知った時は嬉しかった」
「あいつのいる日本へ生きて帰りたいと思えた」と言っていたように、
轟にとって花岡は、同年代で身近にいるからこそ刺激をもらえる存在というか、
切磋琢磨しながら高め合える、生きる活力を与えてくれる存在というか…
2人の事は、友情の枠を超えた強い絆で結ばれている関係性なのだと捉えていたんですね。
でも…帰宅して(大体、お昼休憩中に見る事が多いのです)いつものようにSNSに触れて、
おすすめTLでたまたま目に入ったのが、
「虎に翼」を書かれている脚本家・吉田恵里香さんご本人の投稿。
#虎に翼
よねが【白黒つけたい訳でも白状させたい訳でもない】と言っていますし、轟も自認している訳ではないのですが、一応、念の為に書いておきますね。…— 吉田恵里香@朝ドラ虎に翼4月1日スタート。TB2のコミカライズもよろしく! (@yorikoko) 2024年6月10日
一部抜粋すると…
「轟の、花岡への想いは初登場の時から【恋愛的感情を含んでいる】として描いていて私の中で一貫しています(本人は無自覚でも)。」
「人物設定を考える時から彼のセクシャリティは決まっていました。」
と呟かれていて。
「惚れた」の意味が恋愛を含んでいると思いながら見ていなかった私からしたら、
えっそういう意味だったの!?と、意外に感じてしまったのでした。
轟が花岡に対して恋愛的感情を抱いている…なるほど、そうなのか…。
今まで考えてもみなかったけど、2人のやりとりを思い返してみれば、
花岡が寅子(伊藤沙莉)たちと出会って間もない頃、
本性を隠して女性に近づく彼に対して「撤回しろ!」と何度も訴え、
歪んだ正義感に正々堂々と立ち向かう姿は描かれていたし、
寅子に黙って、妻といきなり現れて結婚報告をした時もそうだった。
当時は素直に、この人は自分の中で強い意志や信念があり、
目の前の物事が正義なのかそうでないのか
白黒はっきりさせたい人なんだという印象だったんですが。
今回の件を踏まえれば…前者に関してはストレートに、
「俺が”良い”と思った花岡」から遠ざかっていく悔しさや憤りとも捉えられるし、
後者は後者で、寅子の複雑な気持ちを代弁する事で
言葉に表せないモヤモヤした感情に蓋をして
それを曖昧にし続けた自分を許せなかったりもしたんだろうな…とも想像出来るので、
「恋愛的感情を含んでいる」と言われても、合点は行くんです。
ただ私が今まで全くそう思わなかっただけで(汗)
(本人は無自覚なものの)轟が花岡に向ける視線が恋愛から来ていたと
気づきもしなかった私はなんて鈍感なんだ!!と思い、後からザーッと感想を調べてみたら、
もしかしてそうなんじゃ…と前から勘付かれていた視聴者もいれば、
わざわざそこも描かなくたって…と動揺されている視聴者もいて賛否両論。
だからこそ、脚本家の吉田さんご本人が補足投稿を上げられていたんでしょうね。
でも…何でしょうね、視聴時も恋愛だと知った時も関係なく、
いつもだったら出てくるはずの「盛り込み過ぎ」「その設定の必要性は?」といった感想が
不思議と出てこなかったんですよねぇ。
もちろん今でも、同性愛者も登場させて”多様性”を押し付ける作品に対しては、
盛り込んだ結果、物語が散漫になり、本来描くべきテーマが霞みがちなケースを
いくつか見てきたので否定的ではあるんですけど…。
本作にはなぜネガティブな感想が先行しなかったのかを考えてみたら、
ここまで、男性が優位に立つ社会の中でスンとした顔をしながら生きる女性とか、
生理の辛さとか、妊娠をしたら仕事を諦めなければならない理不尽な社会構造とか、
大切な人が出征するのと同等にしんどいであろう
生きているのか、帰ってくるのかという不安に襲われながら過ごす戦後の日々とか、
そういった、「初の女性弁護士・裁判官になる佐田寅子」の人生を描く上で、
女性が生きていく中で潜在的に感じている”苦しみ”に目を向ける描写は
ずっとされてきた訳で。
憲法が改正されて「国民は法の下に平等」な社会に変わろうとしている今(当時)、
その対象を”女性”だけでなく”その時代を生きる全ての人”に広げただけで、
昔も今後も、描こうとしている事には
一貫性があるからなんじゃないかな?という結論に落ち着きました。
現代でこそ、同性愛やLGBTQ+を受け入れつつある社会にはなっているけれど、
当時だったら生きづらさを抱えたままの人が圧倒的に多かったでしょうからね…。
ただ、まぁ、こんなに理解あるようには書いていますが、
轟が花岡に恋愛的感情を抱いているのでは?という新展開をまだ飲み込めていない自分もいて。
モデルとなる人物はいるものの、登場人物もテーマも方向性も作り手自身で考えて
構想を練るオリジナル作品である以上は、やっぱり”設定”は”設定”だよな…と思ってしまう
頭の硬い私でもあります。
とにかく、現時点では気持ちがどっちつかずで、何とも言えません(笑)
しかし、吉田さんの過去作品を振り返って思うのは、
人気BLコミックを実写化した「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(通称:チェリまほ)」
に2020年に携わられたのをきっかけに、恋愛感情を抱かないアロマンティック、
アセクシュアルを取り上げた2022年1月期の「恋せぬふたり」、
そして、同性愛も絡めた2023年の単発SP「生理のおじさんとその娘」と…
個々の作品の内容がどうだったかは置いといて、時を経て社会や価値観が変化してもなお、
様々な”恋愛の形”について考え続ける事をやめない方だったんだろうな…と。
で、放送から2ヶ月近く、とても上質に作り上げられているのが伝わる本作だから、
そんなに安易には終わらないだろうと。
寅子の過程も含めて、長年の紆余曲折があって、吉田さんなりの
何か1つの”答え”が落とされるんじゃないかと(正解という意味ではなく)。
今は、信じております。
ああ…さすがに今回の事はなんか書きたくなっちゃって、
悶々と考えながら書いていたら3時間以上もかかってしまった(笑)
シンプルに、よねの姿が見られたのには安心しましたし、
轟とよねが事務所を立ち上げると分かって、2人の今後の活躍が楽しみにもなりましたよ。
「私の前では強がるな」というよねの言葉も、凄く優しさを感じさせて。
「私の前では」っていうのがまた良くてねぇ。
普段は強がったって良いし、轟の考える”男らしさ”を貫いたって良いけど、
時には本音を打ち明けられる人がいないと心が疲れてしまうだろうし、
私にはそうしてくれると嬉しい…なんて想いもあったんじゃないかなと思います。
総じて、2人の等身大さと、2人ならではの関係性が垣間見えた回でもありました。
Source: りんころのひとりごと。
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