星降る夜に 9話(最終回) 感想|同じ空の下、日常は続いていく

ドラマ

 

 

まず、惜しかったな…という点を1つだけ。

どうしても伴(ムロツヨシ)のエピソードが消化不良だったのは否めなかったかなぁ…?と、

そこだけちょっぴり複雑な気持ちにもなりましたね。

鈴(吉高由里子)や深夜(ディーン・フジオカ)、春(千葉雄大)など

皆それぞれ辛い過去や深い傷を追っていた者が、

固定観念に囚われず伸び伸びと生きる一星(北村匠海)との関わりによって

前を向いて歩いて行くまでを描く物語。

そこに伴の心情変化を含む事自体は否定しませんが、

やっぱり罪を犯してしまっている以上は、自分の過去の過ちに目を向ける描写もあった方が

伴のこれからの人生を応援出来たのかな?というのが私の考えです…。

 

彼が働き出した職場に鈴と一星と偶然会ってからのシーンにしても、

私がもし鈴だったら、「雪宮先生は人殺し」と言いふらしてクリニック内を暴れられ、

自宅にレンガを投げられるといった恐怖が真っ先に蘇ってきて、

笑顔で「また来ます!」なんて言えないかもしれません。

2人との再会はなしにして、どこか少し離れた場所で

伴は娘と一緒にやり直そうとしている…という落とし所にしても良かった気がしました。

 

ただ、そこを除けば、”らしい”感じにまとまった最終回だったのではないんじゃないかなぁと。

鈴が1人で星空を見上げてから今までの回想が盛り込まれる流れで

ああ、なるほどな…と思ったのは、「みんな同じ空の下で繋がっている」

本作が送るメッセージだったのだ…という事。

例えば、鈴と一星の出会いは星空の下。

佐々木夫婦が安産祈願にと、神社に参拝しに行った際に見つけたのは一番星。

“雪”宮鈴、柊一”星”、佐々木”深夜”、佐藤”春”、”北斗”千明と、

主要人物の名前の共通点に、気象に関するワードが入っていたのが印象に残っていたんですが、

そのネーミングも、エピソードを広げてきたのも最終回のためのだと気づかされました。

 

挿入歌を流すタイミングも良くてね…。

“始まり”を象徴する夜空をLINEの背景に見立てて

2人の現在進行形でのトークが繰り広げられた後で、

今度は、向こう側に一星が立っていたシーンを彷彿とさせる踏切をチラ見せする形で、

「空の下で続いていく日常」を表現した所で流れた歌詞が

「♪何度でもね これからも 思い出 重ねよう」だったのには、刺さらずにはいられず…。

いやはや、あまりにもバッチリ過ぎる演出でした。

 

キスシーンの頻度はもちろん、それをロマンチックに見せようと

画面を切り替えてはいろんな角度から映したり、

今回で言えばタイミング良くイルミネーションを点灯させたりと、

何かと”若者向けのドラマ”を意識した胸キュン演出が多かったですが。

内容そのものは胸キュンとは一転して、骨太なヒューマンドラマ仕立てで、

最後まで登場人物に愛着を持ちながら

彼らの幸せを願いたくなるような温かい作品でした。

 

最後に、間を挟まずの放送なのもあり、どうしても比較されるだろうと分かっていて

あえて言及してこなかった某静寂についても、最終回なので少し触れながら書くとすると…

静寂が”陰”なら本作は”陽”で、どちらが「あり得る」「あり得ない」って訳ではなく、

どちらも1つの世界に存在し得る作品だったのではないでしょうか。

また、2クール連続でその順番だったからこそ、

放送される意味もより深く感じられたと言いますか。

寒さが増して、空気がひんやり感じてくる秋〜冬の季節に、

静寂では「”伝わらない”苦しみは、中途失聴者だけでなくろう者も聴者も誰もが抱えている」

「それでも、一歩でも踏み出してみれば優しい世界は徐々に広がって行くのかもしれない」

を描いてから、

寒さから春の陽気へと変わり、もうすぐ新生活が始まる冬〜春の季節に、

本作では「”音のない世界”にいる人だって普通に恋愛するし、下ネタだって言う」

「ろう者だからと言って、全部が全部辛いと感じている訳じゃない」を描く…

苦悩から、”普通”と言われている日常生活へとグラデーションがかかっているようで、

通しで見る意義のあった2作品だった気がします。

 

何だか2作品の総括になっちゃいましたが(苦笑)

本作”も”素敵な作品だったと思います。

 

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Source: りんころのひとりごと。

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