最終回も見終えて…つい最近SNSで物議を醸していた
「silent」の脚本家・生方美久さんと演出家・風間太樹、プロデューサー・村瀬健さんが
出演された回の「ボクらの時代」をやっとこさ見ました。
まず、結論から言ってしまえば…
生方さんが「日本語が分かる人に見て欲しい」と仰りたくなったのも
まぁ分かるかな…というのが、全体を見ての感想です。
むしろ私としては、想像していたよりも、
その発言に至るまでにちゃんと”理由”があったのを知る事が出来て、安心もしたのです。
というのも、生方さんは「海外の人は日本語が母国語じゃないから、日本の作品を楽しめない」
みたいに、別に差別意識を持ってあの発言をされた訳ではなくて、
話をお聞きしていると、純粋に「日本のドラマ」が好きで、その良さを伝えたいし、
主に、普段ドラマを全く見ない人、韓国ドラマや洋画を日常的に見ている人に対して
「日本のドラマってこんなに面白いんだよ」と
知ってもらいたくてしょうがない方なんだろうな…という印象を持ったから。
あの発言をされるまでに至った経緯を一部抜粋してみると、こんな感じです。
「同じ言葉だけど違う意味で使うシーンというか、人によって違う意味で捉えられる言葉とか、
あれって日本語じゃないと意味がないと思うのを私は凄い感じてて。」
「これってもし海外で翻訳されて出たら、この意味って海外の人には伝わらないんだという
悲しさがちょっとあるくらいで。
私は日本のドラマとして、日本語の良さとか、日本語の面白さ、
ある意味”残酷さ”みたいなのを描きたいから、ぶっちゃけ海外って興味ない」
最後の一言にしろ、あの発言にしろ、言葉の表現は適切ではない部分はあるにしても、
「日本の作品が海外に出ても、その作品の本来の良さや日本独自のニュアンスが
完全に受け継がれるとは限らない」点では、共感は出来るんですよね。
そこに直結する例として…例えば、字幕放送や音声吹替放送が挙げられますよね?
“海外仕様”の作品は、元々の内容を、ターゲットとなるとある国の視聴者にも理解出来るように、
2つの機能で変換して初めて作られますが…
変換される以上は、それを担当した翻訳者自身の”考え”も無意識にでも入ってくるから、
その国独自の”生きた言葉”にはならない。
残念ながら、これが現状だと思います。
私も日本人だから、ぶっちゃけ、”生きた言葉”が役者さんの台詞の声色、強弱を
通して伝わって来る日本のドラマが好きですし。
逆に、韓国ドラマや洋画を普段ほとんど見ないのは、
現地の雰囲気を掴みたくて字幕放送で見ていても、
時折「ん?この表現は合ってるの?」と違和感を感じて
没入しきれない事があるからだと思っていて。
生方さんもきっと、海外向けに変換される作品からくる
そういった日常的なモヤモヤを伝えたくて、あの発言をされたのだという気がします。
また、SNSだと「『silent』は聴者とろう者の手話を交えての
コミュニケーションを描く作品じゃないの?」「手話を扱っている作品なのに…」といった
呟きも散見されましたが、私としては、「silent」を一から見てみると、
別にそこ”だけ”がテーマではないんじゃないかなぁ…とも。
聴者からしたら、自分の発する声が、ろう者や中途失聴者には届かなくて辛い
(いざ手話を初めてみても、相手には違う形で届いてしまう事もある)。
ろう者や中途失聴者からしたら、手話が相手には伝わらなくて辛い。
そんな「言葉が通じ合わない」「分かり合えない」苦しみは、
何も聴者とろう者・中途失聴者だけに限られた話ではなく、
聴者と聴者、ろう者と中途失聴者、ましてや家族同士と、全ての人々に共通する話であって。
皆それぞれ相手に寄り添いたいと思っていても、その現実にぶち当たっては
どうやって気持ちを伝えて乗り越えていくか…という、
人と人が言葉を交わす事の難しさを良い意味でしぶとく描いている作品なので、
何も矛盾はしていないんじゃないでしょうか。
ただ…1つ誤解して欲しくないのは、
生方さんを庇護したくてこの記事を書きたかった訳ではなくて。
作品が大ヒットしていて、世間から注目を集められている以上は、
もう少し言葉を選んでいただきたかったかなぁ…というのも事実です。
今回の「ボクらの時代」を頭から見た視聴者なら、
生方さんの発言の意図も分かってくれる視聴者もいるはず。
だけど、現代だと、全容を見ずに先にネタバレを読んだり、
倍速再生でドラマや映画を見る人がいたりするように、
その番組の一部の発言や、切り取られた動画を見て物事(=その人自身)を
判断する人の方が圧倒的に多いと思うんですね。
中には、作品自体を全く見ていない人もいるでしょう。
別に、その行為が”悪”とも思っていないし、
そういった人々に対して「全部見もしないで呟くな!」とも言いません。が…
デジタル世界に簡単に晒される世の中だからこそ、
発言の1つ1つにもっと責任を持って欲しかった…と思いますし、
あの発言に対して何もリスクを考えず、そのまま放送したスタッフ側にも
多少は責任があるとも思っています。
個人的には、生方さんが「韓国ドラマとか洋画がそんなにハマらない理由って〜」と
仰る前に、カットされた部分があったような気もしたんですよね。
その前では「地上波でドラマを放送する事の意義」
「ドラマがLINEやTikTokなどの様々な媒体で作られる可能性」について
話題が広がっていたのに、海外の話に発展したのにはちょっと唐突感が。
その前の対談にも少し触れられていたら、
少しでも解釈のズレが起こる事もなかったのかもしれませんし…う〜ん…
というかそもそも、手話を取り入れている以上は、
「なぜ手話を取り入れようと思ったのか?」といった核心に迫る話が一切なかったのも
不自然ではありましたね。
生方さんも、村瀬プロデューサーにも、プロならば”意図”があったはずなのに、
あの内容では「ただ何となく取り入れた方々」に思われてしまうかも…?
元はと言えば、作品がヒットしたからこうして呼ばれる事になったのでしょうが、
求められているものを汲み取ろうとして(?)、
ヒットした理由を考えるのにこだわろうとしたあまりに、
全体的に”言葉足らず”で終わってしまったのも惜しかったですね…。
「ボクらの時代」は台本なしで、
出演者の方々に進行してもらうというスタイルをとっているそうですが、
今回ばかりは、視聴者に事前にアンケートしてもらって、
中盤か最後の方で質問に答えてもらう…という流れを提案してみても良かったのかもしれません。
そんな感じで、頷ける部分もありつつ、残念な部分もあったのですが、
作品自体は好きである事には変わりありません。
最終回の感想も、近日投稿する予定です。
いつもながら拙い感想なので、あまり期待はしないで下さい(笑)
最後に、今更の話題ながら、
ここまで読んで下さった読者の皆様、本当にありがとうございました。
Source: りんころのひとりごと。
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