私が松坂慶子さんをしっかり認識したのは、
お恥ずかしながら「まんぷく」で「ブシムス」という愛称で呼ばれていた
主人公の母親役だったのですが、
本作もそんな松坂さんのチャーミングな持ち味が光る作品となりました。
当初は、語尾に必ず「ぉ〜」がつくような喋り方のパンチ力が大きくて、
なんで主人公を分かりやすく乙女キャラにしたんだろう?
なんでそんな喋り方にさせたんだろう?と疑問に思っていて。
見ていくごとに、それは、親友を失い一文なしであるために、
刑務所でお世話になるしかないと考えるほど過酷な状況に立たされている主人公を見て、
視聴者にあまり過酷だと感じさせないように
コミカルさで中和させる意味を持たせているのだと気づけたのですが。
最後まで見てみれば…桐子(松坂慶子)の存在感が
本作が伝えようとしているメッセージみたいなもので。
彼女を「能天気」で「自由奔放」で、時に「自己肯定感の低い」性格に描く事によって、
「老いる事が悲しい事とは限らない」
「出会いは無限大で、幸せは人との繋がりあってこそ」という、
“孤独”が先行し不安を抱えがちな老後問題にメスを入れる
社会派の面も覗かせる作品に仕上がっていました。
桐子の行動によって、周りの人々が次第に前向きになっていく様も、
逆に、桐子に影響を受けた人々が”恩返し”にと
彼女の考えや今後の人生を後押ししていく様も、本当に見ていて微笑ましくなれました。
ムショ活を通して知り合った人同士のやり取りや、
そこから生まれる気づきや変化を描写するのに徹していたからこそ、
最後の彼女の決断も納得のいくものになっていた気がします。
知子(由紀さおり)が見せたいと言っていた景色がある島で、1人で暮らす。
文面だけなら、誰も自分の気持ちを分かろうとしてくれない、
孤独に耐え切れなくて始めたムショ活を諦め、
結局また孤独の道を選んでしまった…ともとれるかもしれませんが、
初回と最終回とで違うのは、“依存”ではなく”共存”の人生を選んだ事。
親友と過ごした日々=過去にいつまでも縋るのではなく、
親友も含めいろんな人と育んできた思い出と、
今日もどこかで元気に過ごしていて、夢を叶えようと頑張っている
人と人との繋がりを感じながら生きていく…。
新天地でも子供たちに愛され、近所の人々に進んで挨拶する桐子は、
死んだ方が良いなんて弱音を吐いていたあの頃とは全く信じられないほどたくましく見えて、
思わず涙が溢れてしまいました。
娘夫婦から知子の形見を分けてもらえた事。札束入り白菜。薫子(木村多江)の登場。
サーフィンは孤独な闘いだという榎本(長澤樹)の教え。父との対立。
寺田(宇崎竜童)の誘いを受ける桐子。
そして…「秋桜が好きよ 自由に生きるから」。
各回の登場人物やエピソードを再び掘り起こす事で
桐子の変化を裏付けしていく畳み掛けの展開も、”集大成”感がありましたね。
行き詰まる現実と犯罪行為に伴うリスク、出会いの尊さを
5話という短い話数でコンパクトに、かつコミカルに描いていたと思います。
個人的には、NHKの「土曜ドラマ」枠の作品の中では、久々の秀作になりそうです。
↓前回の感想はこちら↓
Source: りんころのひとりごと。
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